私は持ってきた花を活けるために、一旦病室を出た。



花を活けている最中、看護師たちのお喋りが聞こえた。



「昨日、個室に入った患者さん、院長の高校時代のクラスメイトなんだって。」



「じゃあ、あのハゲと同級生なのぉ?もっと若いかと思った。」



ここの院長、ハゲなんだ?



「ねぇ、どんな人なのよ?」



「ちょっと素敵なカンジよ。

オジサマって呼ぶには、まだ早いくらい若く見えるかな。」



「私、好みなのよねー。

あの人担当したいって言ったら、師長にダメって言われてさぁ…。」



「高校の先生なんだけど、すぐに生徒さんがお見舞いに来るくらいだから人気あるんでしょうね。」



これって…、どう考えても坂下のことだよね?



「でも、長くないんでしょ?」



「あっ、ちょっと…!」



看護師の1人が、私の姿を見るなり口を噤んだ。



「あのコ、生徒さんだよね?ヤバイかな…?」



「外人だから、日本語分かんないかも?」



看護師たちは、一斉にその場から去った。



いや、私は日本語分かるんだけど?



ってゆーか、何なんだ?



まるで、聞かれちゃ困るみたいな空気は…。