最近、校内では新入生が授業中の教員に水をかけるのが流行っている。



蒼が1年にバケツの水をかけられた日の午後、坂下の授業が行われた。



坂下は、教室に黒い傘を持ってきていた。



室内で…傘?



しばらくして、その使い道が分かった。



蒼に水をかけた女子生徒たちが、いきなり扉を開けてバケツの水を撒いたからだ。



坂下は傘を盾にし、防御した。



よほど悔しかったのだろう、このとき以来、坂下は狙われ続けた。




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1週間ほど経った頃だろうか



「そろそろ、決着をつけなくてはなりません。」



授業開始5分前に教室に来た坂下は、教壇側の扉の前に透明のビニールシートを張った。



今日は、傘を持っていない。




授業の中盤、例の1年たちが扉を開け、バケツの水を撒く。



ビニールシートに阻まれた水は撥ね返って、水を撒いた張本人を襲った。



さすがに懲りたのだろう、もう坂下の前に現れなくなった。



今回のことといい、前に飛んできたペーパーウエイトも見事にキャッチするほど、鉄壁の守りを誇る坂下。



それならば私に切られたのは、よほど油断していたのか?



それとも、ワザと切られた…のか?