「これは、没収させていただきます。」



坂下は、私の左耳の安全ピンを外した。



「先生、怒らないの?

約束、破ったのに…。」



「原因は私なのでしょう?

それならば、私に怒る資格はありません。」



そう言って、坂下は私の左耳に触れる。



ちょっと、困る…。



私、耳は弱いんだってば!



口元を押さえ、声が出ないようにする。



「少し、血が滲んでいますね。

蒼先生、消毒液は置いてありませんか?」



「僕の車、救護車じゃないですよ。」



「では、薬局へ寄ってください。」



「はぁ?何言ってるんですか!

もうすぐ職員会議始まりますよ、2人してバックレる気ですか?

アンジェなら、唾でもつけときゃ治りますって。

坂下先生、試しに舐めてやったらどうです?

耳弱いみたいだから、きっと可愛い声で鳴いてくれますよ。」



なっ…何言ってるのよ、蒼の奴~!