「何で事務所なんかに行くのよ?」



「坂下先生が、単身で乗り込んだ。

表紙なんか飾ってるんじゃねえよ、このバカたれ!」



蒼は、スピードを上げて車を走らせる。



よくよく蒼の話を聞くと、最初に雑誌を見つけたのは蒼で、ヤバイと思って坂下に相談したらしい。



でも坂下は、その雑誌を教頭に差し出したという。



「先生が、私を売ったの?」



「まぁ、そう…いうことになるかな。

だけど坂下先生は、やめろとまで言ったはずだよな?

あれは本心だよ。

お前が父親の姓に変わってからずっと、やめて欲しがってた。」



蒼は喋りながら、スピードを上げたまま急カーブを曲がる。



ちょっと…いや、かなりコワイ。



「あんたはリコ乗せた時も、こんな運転してるわけ?」



「まさか、安全運転するに決まってる。

事故なんか起こしてみろ、すぐに関係がバレるだろーが。」



自分の保身にしか聞こえないような蒼のセリフだけど、梨香のことを一番に考えてるのは分かる。



「いいわよね、リコは愛されていて…。

私も、それくらい愛してくれる人を好きになれば良かった。」



「何?お前、愛されてる自覚ないのかよ?」