私が思い切り睨みつけたら、彼から笑みが消え、ちょっと驚いた表情になった。


でも、私にはそんなこと関係ない。

怒りに身を任せ、再度口を開いた。



「初対面の人に対して失礼じゃない? せっかく人がわざわざ名前を名乗ってやったのに…アンタは名乗らないし、あげくにお前呼ばわりするわ、男苦手だろとか聞くわ、マジで有り得ない最悪!」


滝のように流れ出た言葉の数々。

言いたいことを言ったからだろうか、やっと落ち着きを取り戻した私は、ハッと我に返り自分の仕出かしたことに気づき慌ててうつむく。


あー、やっちゃったよ。


我慢出来なかったとはいえ、言いすぎだ。
これから隣の席なのに、どうしよう。

なんだか、気持ちがぐちゃぐちゃになって泣きたくなった。


これは、絶対怒ってるよね……。



これから返って来るであろう言葉を予期して、ぐっと身を縮こませていたら、



「……はぁー、なんだよお前。」



「………えっ?」


大きなため息と共に聞こえた声に顔を上げると、なんとも言えない顔をして髪をくしゃっとしているソイツ。


ハテナマークを頭に浮かべていると、少し顔を和らげて笑ってみせる彼にさらに謎は深まるばかり。


…なにがなんだかよく分からない。