きっかけはなんてことないけど、気がついたらキミばかり見ていた。



────あのときから。



「なあ、名前なんてゆーの?」




高2の春、まだクラス替えしたばかりで周りの人と打ち解けてない空気での席替え。



そんな中で、声を掛けてきた隣の席になった男子。


あまり気乗りしない中、ちらりと横を見やると、ジッとこっちを見ている。


何を考えているのか分からないその視線に居心地悪さを感じながら口を開いた。



「……二谷あかねです」


「……ふーん」



な、何なのこの人。



興味なさげに紡がれた言葉。

けれど、まだ私をジッと見つめてて。



なんだか気恥ずかしくなって、目線を逸らしたら、ふいにまた声をかけられた。



「なあ……もしかして男苦手?」