ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


自室でやることは、ひとつ。パソコンを 開くことだけ。

あんなに夢中で書いていたケータイ小説 も放置しっぱなしだから、サイトへの訪 問者もめっきり減った。仕方ないかと思 いつつ、やっぱり切ない。

あんなに何かに夢中になったのは、初め てだったから。

もう一度、何か書いてみようか……。

キーボードを押そうとしたけれど、指が 止まってしまった。

前に、読者さんからもらった厳しい感想 を思い出してしまい、手が震えてしま う。

ありきたりで、似たような作品しか書け ない。自覚はあった。

よくよく考えてみれば、人の見よう見ま ねで書いた恋愛小説に、私のオリジナリ ティーなど出せるわけがない。わかって いたのに、書いたものは全部自分の作品 なんだと思っていた。

読者さんの目はシビアだ。時には辛辣 (しんらつ)な感想もくる。ネットとい う、顔が見えない場だからこそ、リアル にはない素の意見が聞ける。

どうしたらいいんだろう。

私には、読者さんの期待するような作品 は書けない。もう一度書いてみたところ で、どんな作品ができるのかは目に見え てる。

私の理想がこもった甘いだけの恋愛小 説。そんなものを書くために、私はパソ コンに向き合っているのだろうか?

読者さんに厳しいことを言われても、私 はまだ書きたいと思っている。どうし て?

何を書きたい?創りたい?

私は、何のためにケータイ小説を書いて いたんだっけ?