ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


でも、無理だよね。

仮に海君と両想いだとしても、私はきっ と、また、海君を傷付けてしまう。あの 頃みたいに。


それからは、記憶にも残らないようなど うでもいい会話をして、適当にカクテル を飲み続け、閉店間際に店を出ることに なった。


車の運転があるので、海君はソフトドリ ンクしか飲まなかった。

右と左が分からないほど酔ってフラつく 私を支え、海君は言った。

「今日は、ありがとな。

彼氏いるのに、無理に誘って悪かった」

「別に~。どうせ私は、海君みたいに幸 せじゃないもんね~」

この、酔いまかせにつぶやいた本音が海 君にどう聞こえているかなんて、私には 想像できなかった。

海君の車を降り、玄関まで送ってもらっ たことは覚えてるけど、そこからの記憶 がない。

シャワーも浴びず、翌朝まで自室で爆睡 していた。

久しぶりに、ハルシオンを飲まずに眠れ た。

親が二人ともいない時間に目覚めると、 私はシャワーと歯みがきを済ませて、大 学に向かった。

海君と再会したのが夢の出来事だったよ うに感じる。


夕方、講義が終わりバイト先に行くため 門を抜けると、ミチが待っていた。

こんな風に大学まで来られたことはあま りない。

「どうしたの? こんなとこまで」

「ヨウ、5000円ない?来月絶対返すか ら!」

なるほど……。昨日、あんなメールをし てきたのは、私を喜ばせておいて金を要 求するためだったのか……。

絶対返す。そう言いながら、ミチは一円 も返してくれたためしがない。そういう 人なんだ……。