ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


メニューを見て適当に注文を終えると、 また、沈黙が流れた。

海君は何か言いたそうにしながらも、 「腹減ったな」とか「今日、けっこう人 来てるな」と、店内を見回している。

私はなんだか居心地が良くなくて、ケー タイを見た。

珍しく、ミチからメールが来てる…!

しかも、どういう風のふきまわしなの か、

《ヨウ、愛してるよ》

なんて、優しい言葉が入っている。

最近ずっと冷たかったのに、久しぶりに 愛情をかけてもらえた気がする。

なんだか嬉しくて、私はいそいそと《私 も、大好き》と、返信した。

ホント、単純だよね。ミチとはもう会い たくないとすら思ったし、借金させられ てイライラしてたはずなのに、こんな メールひとつで癒されてしまう。

ウキウキしながら返事を待っていると、 私の変化に気付いたのか、海君がイタズ ラっぽく訊いてきた。

「さっきまでムスッとしてたのに、急に 元気になったな。彼氏?」

「うん。久しぶりに愛してるって言われ た」

海君への未練を断ち切りミチ一筋に戻る ため、私はそんな風に返した。

明るかった海君の顔が、一瞬くもる。

でも、次の瞬間は何事もなかったみたい に、

「そっかー。イイヤツと出会ったんだ な」