タイムカードを押して、バイト先を出 た。
目の前には、コンビニ。真っ暗な時間 に、コンビニの明かりがまぶしかった。
店内の小スペースで飲食できるコンビニ だからか、わりと多くの客がいた。私の バイト先とは大違い。
外から見える雑誌スペースに、海君はい た。旅行情報誌を立ち読みしている。
会ったら、一生忘れられなくなる。
無視して帰ろうと思ったのに、海君は目 ざとく私に気付き、駆け足でこっちに やってきた。
何も買わずに出ていく海君を、店員は迷 惑そうに見ている。
「おつかれ! 寒かっただろ?」
海君は言い、自分のマフラーを私の首に 巻いてきた。
まるで、今までずっと恋人同士だったか のように、自然な流れで……。
動揺を隠したくて、私は、冷たい口調で こう言うしかなかった。
「なんか、変なの……。私達、別れたん じゃなかったっけ?」
「そうだっけ?俺はそんなつもりなかっ たけどなー」
海君は私の顔をのぞきこみ、
「なんてね。せっかく再会したんだし、 飲みに行こ。
帰り、ちゃんと送ってくし」
海君は、シャランと音を立てて車のキー を右手につかんだ。
免許、取ったんだ。そっか。高校出てか ら働いてるって言ってたな。もう、社会 人なんだね。
心の中は中学生の頃と変わってないの に、海君と会わないうちに、5年という 月日が流れていた。
なんだか、時の流れを重たく苦しいもの に感じた。


