お母さんが夜勤を始めてから多少暮らし は楽になったけど、貧乏には変わりな い。

最近やっと元気になってきたお母さんに 負担をかけたくなくて、安い物ばかり買 い物していた。

机の上に置いてある5000円札。私は、そ れで1か月分の自分の食品を買ってい た。


海君は私を強引にスーパーまで連れてい き、心配そうに、

「野菜や肉は? なんか、食いたいもん ある?

俺、昨日ちょうどこづかいもらったばか りだから、ちょっとくらい高いもんでも いいぞ?」

そう言いブロッコリーを手にする海君の 手を、私は必死に止めた。

「ちょ…! 野菜って高いもん、いらな い!」

ブロッコリーは198円もする!

「豆腐がいい! ひややっこにしよ!」

ついクセで、そんなことを言ってしま う。

好きな人と買い出しに来て値段のことば かり考えてしまう自分が恥ずかしいし情 けないけど、海君にお金を出してもらう 以上、安い買い物で済ませたかった。

私の主張にうなずきつつもスルーし、結 局海君は、野菜やお菓子をたくさん買っ てくれた。