一緒の高校に行くと約束した日から、学 校内で海君と話す時間はなくなった。
ウワサの件で、海君は私の立場とかを気 使い、わざと、私に話しかけて来なく なったんだ。
そのかわり、私たちは、放課後にこっそ り会うようになった。それが、中学3年 になってすぐのこと。
制服のまま会うこともあれば、私服に着 替えてから会う日もある。
この頃から、高校受験のために海君は塾 通いを始めたので、塾のある日は私服 で、塾のない日は早くから制服で会うよ うにした。
二人で会うのは、学校で話せない分を埋 めるためでもあるけど、海君に勉強を教 えてもらうためでもあった。
海君が塾通いを始めて以来、私と海君の 成績は、比べるのがこわいほど差が開い た。
たとえばテスト。海君は上位をキープ し、学年十位以内になるほど優秀な出 来。一方、私はいつも平均点以下。順位 も、下から数えた方が早い。
そんな私が海君を頼るのは、もはや当た り前の流れだった。
海君に教えてもらうと、不思議と自分が 天才に生まれ変わった気になるくらい、 勉強ができるようになった。
でも、ひとりになるとまた、問題が解け なくなる。
塾は、私達の家からわりと近い場所にあ る。
塾が終わると、海君はウチの前の公園ま で自転車で来てくれた。
外灯を頼りに、公園のベンチに座って勉 強を教えてもらう日々。
さすがに、毎回公園に来てもらうのは悪 いから、私が塾前まで行くと言ったのだ けど、
「いいから、俺が行く。女だろ、遅い時 間にヨウひとり出歩かせるわけにいかな いし」
と、海君は恥ずかしそうにつぶやいた。


