ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


私は、最悪なことを言ってしまった。

今まで、ひとりぼっちの私を支えてくれ たのに、あっさりと離れたいと言ってし まって。

悪いな、怒らせたかなと思っても、なん だか謝れなくて。

意地を張ってしまったことが、後悔に なって残る。


その日はそのまま、口をきかずに別れ た。

まるで、最初から関わりなんてなかった みたいに、私たちはそれぞれ違う教室に 向かう。

胸が、ズキズキした。

もう、普通に話せなくなるかもしれな い。

不安に思いながら登校した翌日、海君は 普通に話しかけてきた。しかも、朝イチ バンに、私の教室までやってきて。

「ねえ、もうすぐショートホームルーム 始まるよ!」

焦る私に、海君は一冊の冊子を見せてき た。この県の高校一覧が載った資料集。

「もう、受験のこと考えてるの? 私た ちまだ中2だよ?」

「ヨウ、俺達一緒の高校いこ! なるべ く、同じ中学のやつらがいないとこ選ん でさ!

そしたら、もう、何も言われないだ ろ?」

海君は申し訳なさそうに頭をかき、

「昨日は、キツイこと言ってごめん な……。ヨウに、絶交宣言されたって思 い込んで悲しくて、つい……。

ヨウ、クラスでつらい思いしてるから、 俺とのウワサも、嫌に決まってるよな」

考えなしでごめん。と、海君はまた、 謝った。


「私こそ、ひどいこと言ってごめん ね……。海君と一緒にいるの、いつもい つも楽しかったのに、私……」

ホッとしたら、涙が出た。

一緒の高校に行く約束をして、私たちは 仲直りの握手をした。

海君の手が思ったより大きくてゴツゴツ しているんだと知って初めて、私は海君 を男の子として意識するようになってし まった。