ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


薬は、一度飲むと、飲まなきゃ気 がすま ないクセがつくらしい。

それがこわくて、私は最初、いろいろな 食 材を食べて不眠を改善しようと試み た。

寝る前に飲むあたたかい牛乳。

自然な眠気をうながす半身浴。

気に入った香りで部屋を満たすアロマテ ラピー。

他にも色々やった。安眠に利くものは何 から何まで。なのに、私にはどれも効果 がなかった。


普通の人なら効くのかもしれない安眠食 材 も、私のくたびれた精神には無効らし い。


……ぜいたくは言わない。

私だけを愛してくれる人に、出会いた い。疑わずにすむような愛がほしい。


ハルシオンの効果が出るまでの間、私は ケータイをとりだし、ベッドの中で読み かけ だったケータイ小説を読み始めた。

オフィスラブや、ヤクザ系。甘々不良 系。

小説の中。非日常の舞台では、緩急をつ けた甘い恋の話が紡がれていた。


……これだけ読んでるんだ。

もしかしたら、私にもケータイ小説が書 け るかもしれない。

書いてみようかな……。

どんな主人公にする?


私の意識は、そこで途切れる。

期待通り、ハルシオンは私に深い眠りを プレゼントしてくれた。