ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ



少なくとも、私は父の言動がもの すごく 恥ずかしい。一緒に歩きたくなどな い。 本当に嫌だ。

血はつながっていなくても、戸籍上は親 子 。

母と結婚するまでひとり身だった父に は、 私の気持ちなんて理解できないんだ ろう。

母の話では、父は今まで恋人がいたこと すらないらしい。できないよね、あんな 性格 じゃ。


不愉快でしかないことを回想しながら冷 め た気持ちで靴を脱ぎ、父の怒鳴り声を スル ーして私は自室にこもった。

母はなぜ、あんな人と再婚したんだろ う……。


聞きたくもないのに、ケンカの内容は壁 を 貫通して私の耳にも届いた。

父が常に抱いている不満は、私のふるま い に関してだけじゃない。

父は、母との間に、自分の遺伝子を継い だ 子供を授かりたいらしい。つまり、血 のつ ながった自分の子が欲しいのだ。

でも、母は、それを拒んだ。

私を育てるだけで精一杯だし、40過ぎ た 今の体で妊娠などしたくない、という 理由 でだ。母の気持ちは何となく分か る。高齢 出産は、母子共に命の危険があ ると聞いた ことがあるし。

しかし、父にはそれが分からないらしく ( いや、想像力が欠如してるんだろ う)、よ って、一人で勝手にストレスを 増幅させて いる。

「そんなに自分のコがほしいなら、私な ん かと結婚せず若い嫁をもらえばよかっ たじ ゃない!」

母は泣きながらそう言い返していた。