ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


『両親』と言ったって、私にとっ ての身 内は母だけだ。父とは、血のつなが りが ない。

私が中学を卒業した後の春休み、母 は“あ の人”と再婚したのだ。

それに、私は、今の父に嫌われて当然 だっ た。

母が再婚したばかりの頃、私は、父の注 意 に一切耳を貸さなかった。

母の再婚に内心反対していたのはもちろ ん だが、当時の私は、突然横から出てき た他 人に父親面をされたくないと思って いた。


私が父を嫌いな理由は他にも ある。

トイレの後に手を洗わない不潔さが気持 ち 悪い。

それに加え、いい年して女好きだから。

母と父、三人で買い物に行った時など に、 それは嫌ほど分かることなのだが、 父は、 私と母がそばにいるにも関わら ず、10代 の女の子を見るとなめ回すよ うに彼女達を 見ている。

また、制服姿の女子高生がそばにいる時 も 、父は妙な視線で彼女達を見遣る。

私とそう歳の変わらない女の子達相手 に、 40過ぎた男が露骨にガン見する構 図。恥ずかしいと思わないのか?

いや、多分、年齢の問題じゃない。父が いくつであっても、何か嫌だ。

男性なら多少そういう部分があるのは仕 方ないのかもしれないし、全く関係ない 他人の行動だったらウワッとは思うが理 解は示せる。でも、家族の話となると、 全く違う次元の話。

仮にも父親が、戸籍上娘にあてはまる私 の前で周囲の女性を見るあの目には拒否 反応しか起こらない。

私のことも変な目で見ているんじゃない か、と、疑ってしまう。そんな風に受け 取ってしまう精神的苦痛に、うんざりさ せられる。