「今は雑貨屋の社員としてアロマオイル や雑貨を売ったりしてるけど、これも自 分の将来のためと思ってやってる。

好きな人を幸せにするための修業、だ な」

「海君」

「これからもっと、そばにいられる?ヨ ウと」

海君の瞳が、潤んで見える。そこに込め られた想いを、私は感じ取っていた。

初めての感覚。身体中が小さく震えて、 なのにとてもあたたかい。

「愛されるって、こんな感じなんだね」

ドキドキはしないし、トキメキもない。 でも、ぬくもりがある。

すりきれていた体が、カサカサだった心 が、たくさんの水で潤むのがわかる。

「海君……」

私は初めて、自分から海君を抱きしめ た。

「もちろん、これからもずっと一緒だ よ」

「ありがとう。一生大事にするから」

昔よりずっと大人になった海君の腕に、 抱き返される。

伝えきれない感謝。数えきれない傷跡。

海君の腕の中で、もっと幸せな日常を見 たい。