ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


「伊織君……」

私は、ここで眠る伊織君に向けて、海君 には言えなかったことをささやいた。

「人生って何のためにあるのか、私は分 からなかった。ずっと親の都合に振り回 されて、無力な自分が反抗したところで 無意味で……。何度自分の価値を見失っ たか分からない。死にたいと思ったこと もある。

他人にも興味なかったし、つまらない毎 日に嫌気がさして……。なのに、海君の こと好きになってしまって……。それが 高じて、海君が伊織君と関わることにま で嫌な気持ちになって……。

伊織君が居なくなればいいって、何度も 思った。そしたら海君は私だけの海君で いてくれるって……」

こんな自分が、今はとても恥ずかしい。 誰にだって、つらさのあまり他人に寄り かかりたくなる時がある。私だけじゃな い、“伊織さん”もそうだったのに。

だからこそ、過去の弱くて情けなくて否 定的な自分を、これからは優しく包んで あげたいって心の底から思う。