ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


墓前にしゃがみ込み、私は両手を合わせ た。

“伊織さん”に嫉妬していた頃を思い出 し、そこに海君の告白を重ね、私は恥ず かしくなった。照れているとかの恥ずか しいではなく、人として恥ずかしかっ た。伊織さんの立場を知らなかったとは いえ……。

私は、自分のことしか考えられなくて、 嫉妬してしまった。海君を無駄に傷付け て、自分も傷付いていた。


『伊織にヨウのこと話したことあるん だ。そしたら伊織、“俺も空部に入りた かった”って言ってた』

私が引っ越す前日の夜、海君が言った。

『お前は幸せになれよ。じゃなきゃ許さ ない。伊織が亡くなる少し前アイツにそ う言われたんだ。その時は“何死ぬみた いなコト言ってんのー!やめろよ なー!”って茶化(ちゃか)したけど、 アイツが死んだって知らされた時、まさ か本当に死ぬなんて思わなくて、頭ん中 真っ白になった……。

俺も、きっと伊織も、生きてればつらい ことも経験する。だけど、幸せになっ たっていいんだ。そんな当然のこと、伊 織は忘れてたんだな。ううん、忘れるし かなかったんだろうな』

そう言っていた海君は悲しげで……。