ケータイ小説『ハルシオンのいらない日常』 著:ヨウ


念願の携帯電話を持たせてもらえたの は、お母さんが再婚し、経済的余裕がで きてからだった。

だから、私と海君は高校が離れることを キッカケにあっさり関係を絶つことがで きたんだ。もしケータイで連絡を取り合 えるような関わり方をしていたら、ズル ズル接点を持ち続けてしまっただろう。


「ヨウが別の高校行ったって知った時、 伊織のことが原因って思った」

「……もうやめようよ、その話」

「毎日、ヨウのアパート行った。でも、 そのうちヨウも引っ越して、本当に会え なくなって……」

そう。お母さんが再婚する前まで、海君 は私のアパートから目とはなの先に住ん でいた。

高校生になってからも、毎日海君がウチ の前で待ち伏せしてたことも知ってる。 でも、学校が忙しいフリをし帰宅を遅ら せたり登校を早めたりすることで顔を合 わせないようにした。

アパートを出る日、二度と海君には会え ないかもと考えたら恐くもあったけど、 それより、嫉妬に苦しむ恐さの方が大き いと思い出し、黙って引っ越したん だ……。