伊織は、こんなに頻繁に連絡してくる。 だったら、電話じゃなく直接会えばい い。私は海君にそう提案した。

けれど、海君は素直にうんと言わず、

「俺はできる限りヨウと一緒にいたい。 それに、伊織はワケあってあまり会いに 行くことはできない。

伊織に会いに行けないからヨウに会って るってワケでもないから、誤解すんな よ?」

と、私の手を握りしめた。

会えず、なのに、電話には出る。

私はますます、わけがわからなくなっ た。伊織さんと海君の関係に首をかしげ てみても、二人の付き合い方に納得がい くわけでもない。

不安がる私に、海君はケータイの履歴を 全部見せてくれた。受信メールも、何も かも。

伊織さんからは、時々こんなメールが届 いた。

《死にたい。生きていたくない。》

海君は、伊織さんが不安定になるたび彼 女に電話をし、慰めたり励ましたりす る。

伊織さんも、何かに苦しんでいる。私み たいに学校でハブにされたり、家族のこ とでつらい思いをしてるのかもしれな い。

もし、この人が海君のイトコじゃなく て、全く関係のない他人だったら、私は 彼女に共感したり、励ましの言葉をかけ ることができたのかもしれない。

でも……。私は、そんなことできない。 自分だけが大切で、自分さえよければい いと心から思う、小さな小さな子供だっ た。