朝礼が始まる。
歌が流れてきた。暑いな。
奈緒がこちらを振り返ってきた。かなり、珍しい。
タオルで汗を拭きながら、どうしたの?と口だけ動かす。
あとで、秘密教えるね!と奈緒。
なんだろう?
奈緒が私に言ってない秘密というのは、気になる。



朝礼が終わると、私はそそくさと、奈緒の元へ向かった。
「なになにー?気になるよう!」
「実はね…」
なるほど。奈緒はずっと片思いしていた巧くんに、まだ望みがあることを知ったらしい。



巧くんとは、奈緒の通う合気道教室の同級生だ。名門と呼ばれる男子校で、私も学祭に行って、巧くんとは、あったことがある。
私にも親切にしてくれて、優しい人だというのが唯一覚えていることだ。



「うそっ!!よかったじゃん、奈緒!」
それにしても、恋は人を変えるものだ。合気道教室で、巧くんに巧くんの友達が、奈緒ちゃん、かわいくなったよねと言ったのに対して、そうだね、と言って、爽やかに笑っていたというのだ。



女友達として、巧くんと仲良くしていた奈緒だが、いつかは、ちゃんと気持ちを伝えたいのだという。



私は初恋の経験はないものの、恋バナは好きだ。だから、奈緒の話には、いつも幸せが詰まっていて楽しい気持ちになる。