「なんかごめん…。昨日龍さんにも似たようなこと言われたんだけど、それってどういう意味なんだ?俺、前にどこかで会ったことあるっけ?」
「………いや、」
俺の問いは否定するのに、眼差しは変わらず寂しげで。
「じゃあ一体何のこと言って――」
さらに問い詰めようと前のめりに体を出した瞬間、温かな感触が頬を包んだ。
伸ばされた、要樹の手だった。
「な、に……」
まさか要樹がそんなことしてくるなんて思わなくて、動揺してしまったのか声が裏返ってしまう。
「ずっと………」
「………ぇ」
小さく呟かれた言葉。
でもそれ以上言葉が紡がれることはなく、触れていた手も離れていく。
「あの――」
“見ーつけた”
もう一度問おうと言いかけたとき、頭に直接響く声があった。
と、同時に身体が固まる。
あ………マズイ。
“やっと見つけた”
どうしよう、どうする……?
「……?おい、大丈夫か?」
怪訝な表情で顔を覗き込まれ、要樹がいたことを思い出す。
だめだ、離れなきゃ……。
要樹を巻き込んじゃだめだ。
「ごめん!」
「は?おい――」
要樹の止める声も聞かず、俺は闇雲に走り始めた。
何処でもいい、
何処でもいいから誰も居ないところに……。


