校門の向こうに桃園学園の制服を着た、眼鏡の生徒が一人。
こちらの方を向いていた。
俺は辺りをキョロキョロと見回す。
姫様、なんて見当たらないけど……。
人っ子一人通っていない道。
「――姫様!!」
なのにも関わらず、生徒はもう一度叫びながら、こちらに駆けてくる。
え……
なんか、こっち来てないか?
いやいや、今姫とか言ってたし。
俺、男だから関係な――。
「お会いしたかったです、姫様」
その生徒は俺の前に跪き、あろうことか俺の手を握った。
「……はい?」
「この日をどれだけ心待ちにしていたか。」
な、何コイツ…?
何か転入早々変な奴に捕まっちゃったんだけど…。
「あ、えっと、すみません。俺、転入してきたばっかでよく分かんないんですけど……。とりあえず人違いです、間違いなく。」
「いいえ、そんなはずはありません。私が見間違えるはずなどありません。姿は変われど、その魂は同じ。間違いなく、姫様です。」
うっ……
なんかこの人、目がキラキラしてるんだけど。


