要樹の言った通り売店は人が少なかった。
昼休み終わりかけってのもあるんだろうけど。
「いらっしゃい!何にする?」
そう元気に迎えてくれた売店のおばちゃんは、人が良さそうな笑顔をしていて、きっと生徒に好かれる存在なんだろうなと、瞬時に理解した。
「って言ってももう残り少ないんだけどね。」
眉尻を下げて申し訳なさそうな顔をするおばちゃんに、俺は首を振った。
「俺が来るの遅かったからですよ。これ、ください。」
メロンパンを指して言えば、110円だとおばちゃんは微笑んだ。
財布から丁度の金額を渡して、パンを受け取った。
「毎度!また来てね!」
おばちゃんが笑って言ってくれた直後、隣に立っていた要樹が無言で歩き始めてしまった。
俺はおばちゃんに軽い会釈を返して、慌てて要樹の背中を追った。
「売店のおばちゃんいい人だな。」
「…………なんで?」
無視されるかと思った呟きに、意外にも要樹は反応した。


