「助かったよ。なかなか抜け出すタイミングがなくてさ。昼飯食いっぱぐれるとこだった。」
隣を歩く要樹は、不機嫌な顔で前を向いたままだ。
「そんなんだから怖いって言われるんだ。」
「………は?」
「クラスの子達が言ってたよ、近付きづらいって。」
「………どうでもいいな。それより、食堂で良いのか?」
「え?」
「売店もある。食堂よりそっちの方が人少ないぜ。」
俺は思わず要樹の方を見た。
確かに俺は人混みが苦手だ。
でも、そんなこと一言も言ってない。
……偶然かな?
「えっと、じゃあ売店で。」
あ、もしかして要樹自身があまり食堂に行かないのかも。
見るからに人混み嫌いそうだもんなぁ。
「…………なんだよ?」
迷惑そうに俺を見る。
知らずのうちに要樹の顔を見つめてしまっていたようだ。
「いや、何でもない。ただ、どうして俺が人混み苦手なの分かったのかなって。」
「………たまたまだろ。」
だからなんだと言わんばかりの返しに、会話は途切れた。


