その席は空席。
要樹は俺がクラスメート達に質問攻めにあっている間、どこかに行ってしまったらしい。
い、いつの間に……。
「藤倉、あいつ平気なのか?」
目の前の生徒がさっきよりも目を丸くして俺を見た。
質問の意味が分からなくて、俺が首を傾げた。
「何が?」
「いや、ほら……壬生ってなんか怖いって言うか。近付きづらいって言うか……」
「んー…………そう?」
確かに掴み所ない感じはあるけど、怖いとは感じないなぁ。
「要樹は良い奴だと思うよ。」
ちょうど俺が言ったタイミングで、要樹が教室に戻ってきた。
手にはペットボトル。
飲み物買ってたのか。
俺はクラスメートに一言謝り、要樹に近づく。
「要樹、食堂の場所教えてよ。」
「………何で俺が。他の奴らに聞けば良いだろう。」
「良いじゃん。俺は要樹がいいんだよ。ほら、」
と半ば強引に要樹の手を引き、教室を後にした。


