俺の言葉に要樹は嫌そうな表情を浮かべ、
「………忘れた。」
と小さな呟きが返ってきた。
忘れたって、部屋出た時間を?今朝のことなのに?
絶対に嘘じゃん……。
「なあ、そんなに俺のこと嫌い?」
「……別に。」
素っ気ない態度は明らかに拒絶だと思うんですがね…。
口を開きかけたところでチャイムが鳴り、教室のドアが開いた。
号令で授業が開始され、結局、要樹とそれ以上会話することはなかった。
授業中、10分休憩も含め要樹は寝続けていたため会話にならなかった。
そして昼休み。
要樹を捕まえるより先に、俺はクラスメート達に捕まった。
「どこから来たの?」
「何でこの時期に転入?」
「どこの部屋?」
「彼女とかいないの?」
なんて質問攻め。
最初は答えていたけど、全然終わる気配がない。
どうしよう……
このままじゃ昼飯食いっぱぐれるよ……。
「あの、ごめん。実は一緒にお昼食べる約束してて」
「約束?誰と?」
「えっと、要樹と……」
ほんとは全然約束なんてしてないけどさ。
「要樹って、あの要樹?」
と、クラスメートが目を丸くして隣の席を指差した。


