【短編】恋しちゃダメですかっ?

「今日もその先生が来るのまってんの。
あんたも見ていったら?
かっこいいんだから。
あの、白衣がぐぐってこう胸にパンチをあたえるんだよね。うんうん。」


「ゆき、私、時間ないから、いかなきゃあ。」


「たしか、かなりベタな名前だったよ。
え〜と、田中?ん?違うな…斉藤?ん?違うし、鈴木だ、鈴木、鈴木三郎って書いてた。フルネームで。多分鈴木って多いからか?」

鈴木???


三郎???



「わぁ、発見!!
ゆき、もうくるの?」


「あと30分ぐらいで検診かな?」


ことねはゆきの両手をぐいと掴み、心でありがとうと何回も呟いた。


「離してよ〜ことね、手を離してよ。気持ち悪い子だね。ったく。」


ゆきがこの場所にいたら、言えないよね。


小太郎からの伝言を伝えたいのに、外にでていってくれないかな?



な〜んだ。
私が外で先生をつかまえて、言えばいいんだ。





「鈴木先生の巡回です。」

ぞろぞろと白衣の集団が部屋にはいってきた。



ゆきはうっとりと中央にたつ、先生を女の顔でみつめる。


たしかに、イケメン。
きりりとして、優しい瞳がにこりと子供たちに向けられる。


一人、一人の検診が終わり、外にでたと同時に、鈴木三郎先生の腕を力いっぱい掴んだ。


「な、なんですか?
痛いです!!」


白衣の天使たちに、にらまれながら、小太郎の伝言を小さな声で伝える。



近くで見ると、やけに、かっこいい。

少しだけ、胸がどきゅんとしたが、小太郎といる時ほどでもない。