「わかってるだろうけど、
海ちゃんの信頼できる大人は蒼だけだろ…?
蒼に恐怖を覚えたら、
海ちゃんはもう大人を信頼できなくなる。
しっかり守ってやれよ。」



「ああ。わかってるよ…。」



―言われなくともわかってる。
そんなふうに思う気持ちもあるけど、
止まりそうになかった俺を
間接的に止めてくれたのは拓だから。
言い返したくても、言い返せなかった。



「まー、生殺し状態だよな。
一緒に住んでて、手、出せないとか。
無防備の時の方が多いだろーに。」



「ま ーな…。」



―でも、海に嫌われたり、
怖がれたりするくらいなら、
いくらでも我慢するけどな。



「とりあえず、本気だって気持ちが
伝わるまでは我慢したら?」



「うん、そーするよ。」



俺は今だけじゃなくって、
これから先、ずっとずっと永遠に
海が欲しいんだ。



―そんな警告を受けた夜。



俺は我慢出来ずに、仕事の合間に
海に電話をかけた。



可愛すぎる反応と愛しすぎる声。
仕事を全て放り出して海の元へ
帰りたいとさえ考えた。



だけど、なんとか、理性が効き、
そんな俺の阿呆な考えは
行動に移す前に却下された。



―そんな悶々と考えていたのが、
12時間程前。



今は、また理性を崩されそうな
危機的状態に陥っている。