―それは、家族3人で
アウトドアキャンプを
しに行った時のこと。



自分たちでテントを張って、
自分たちで
アウトドア料理を作って食べて、
寝袋に入って3人で眠る。



日常的にやっている行動なのに、
キャンプってだけで、ものすごく
楽しかったのを今でも覚えてる。



―花火もしたんだ。



その時の夜空が、今みたいな
満天の星空だったんだ…。



ツー。



思い出したら、泣けてきた。
頬に伝う、一筋の涙。



拭おうとした、その時だった。



ぎゅ。



「………っ………。」



後ろから抱き締められた。



「眠れないの?」



―そう言いながら、
先生は私の頬に流れた涙を拭った。



「怖い、夢みたの…。」



「そっか…。」



先生は片手で抱き締めて、
もう片方の手で私の頭を撫でる。



―先生は何でこんなに優しいの?



患者とはいえ、
他人である優しくしてくれて。
帰る場所がないと
一緒に住まわせてくれる。
なんだかんだ脅しをかけながらでも、
やってくれていることは私のため。



―理由がわからない。
先生が何でこんなに優しいのか。



「甘えてよ。」



「え?」



「俺は、海を裏切ったりしない。
ずっと、ずっと、傍にいる。
だから、寂しい時は俺に甘えてよ。
困ってる時は俺を頼ってよ。」



「本当に信頼して、いい?」



「うん。」



「ずっと、傍にいてくれる?」



「うん。」



そう言うと、先生は私を両手で
力強く抱き締めた。