「んで、どーするんだ?
…行く宛は、ないんだろ…?」



「…うん…。」



親戚は絶対に無理だし、
行きたくないし、
友だちは、波以外にも、
もちろん居るけど、
『住まわせてくれ』だなんて、
頼める宛はない。
……………恋人は、いませんしねー…。



後は、孤児院か………。



―けど、孤児院なんて、
できれば、行きたくないしなぁ…。



孤児院か、此処か。
どちらかの選択。



「迷惑なんて、思わないよ?」



―先生が口を開いた。



「え?」



「むしろ、居てくれるほうが
ありがたいんだけど?」



「何で?」



「家事とかやってくれると
助かるんだよな。
俺、仕事、大変だからさ。
飯とか、ムチャクチャなんだよ。
夕飯なんて、食べないか、
カップヌードルばっかだし。
飯、作ってくれると嬉しいんだけど。」



「それぐらいなら、別にいいんだけど。
…家賃とか、生活費とか、
すぐには払えないから…。」



「金はいいよ。
家事するので十分、分は合うから。」



「…でもっ…、」



「俺がいいって言ってんだから、
いいの。
それでも、気に食わないなら、
出世払いってコトで。」



「ほ、本当にいいの…?」



「聞き分けの悪いヤツだな。
いいって言ってんだろ?」



そう言って、
先生は私の頭を笑いながら
クシャクシャと撫でる。



「それとも、俺と一緒に住むのが
嫌なら別にいいけど。」



ー“別にいい”
先生は、絶対そんなふうに思ってない。
自惚れかもしれないけど、
なんとなく、そう思った。


「…わかりました。
よろしくお願いします。」



先生の膝の上で、ペコリと頭を下げた。



「よろしく、海。」



―先生は、ニコリと笑って、



ちゅ。



「ぎゃあああぁぁぁ!!」



「ハハハハハ!!」



―先生、爆笑。
―私、奇声。



漣 海、16歳。女子高生。2年。
7月の下旬。
私は一気に大人の階段を
上ってしまった気分です!!!