「お、おおおじゃまします…。」
さすが、高級マンションなだけあって、
電気はセンサーで自動で点くし、
廊下は広いし、部屋もいくつもある。
―でも、そこに、違和感を感じる。
「…誰もいない…?」
人気(ひとけ)を全く感じない。
すごく広い部屋なのに…。
―そして。
「………何で、
先生が入ってきてるんですか?」
―そう。廊下を歩み進める私の横を
先生が飄々として歩いているのだ。
「何でだと思う?」
「きゃっ!!」
先生が不意に私の手を掴んだ。
―私に尋ねる
その表情はものすごく得意気で、
無邪気で少年のような表情だった。
その表情が可愛いとか
思った私だったけど。
オイ、コラ、ちょっと、待て。
何、
恋人繋ぎ
してんだよ!!!
私が一人、テンパる中、
先生は楽しそうに私の手を掴んだまま、
リビングルームに向かった。

