退院日。



―私は最低最悪の気分だった。
それは、まるで…、…死刑執行の気分?



いや、多分、死ねるのなら、マシ。
文句言われながら親戚の人たちに
いじめられて生きていくのかな…。



想像すると、
悪寒がする。
足がすくむ。
手足が震える。



あー、どうして生きていこうか、私。




そんな風に、
考えながら車に乗った私だったが。



「素朴な疑問なんですが、
何で先生が運転してるんですか。」



―そう。
私を引き受ける人たちの元に行くのに、
何故か岬先生が
車を運転しているのだ!!



「引き受ける人が今日、
用事があるから、
迎えてくれって頼まれたんだ。」



「そう。」



病院は患者を送り届けることまでして、
さっさと退院させたいのだと考えると、
寂しさを覚えた。



元気な患者を置いていられるほど、
病院に余裕がないことはわかるけど。



なんだか、追い出された気分で寂しい。



…なんて、
呑気に考えていた私はバカだ。



もう既に私は、
先生の術中に嵌まってしまっていたのだから…。