―でも、その子は【死】を望んでいた。



助けたことが
間違いだったのかもしれない…。



海の両親と海の親友とその家族は
その事件で亡くなっていたのだ。



その衝撃的な事実を知ったのは、
後になってからだったし、
もっとひどかったのは、
彼女の親戚たちだった。



病室の前でフザケタことを言うから、
注意もした。…はっきり言って、
その場で殴りたくもなった。




…海は居場所がないんだ…。



そのせいで、海は、
「全てに置いていかれた。」だの、
「私も死にたい。」だの、
「何で、私は死ねなかったの。」だの。
そんなことばかり言う。



俺としては、
せっかく助かった命なんだから、
しっかり生きて欲しいと思う。




俺は、海に元気を出して貰おうと、
彼女の興味があるような
話を持ち掛けた。



…そんなに話に
乗っては来なかったものの、
あるテーマパークの話をしたら、
ものすごく乗ってきた。



昔、両親に連れられ、行ったらしい。
すごく、すごく、
嬉しそうな表情をしていて、
話している彼女は
キラキラと輝いていた。



その表情はものすごく、可愛かった…。



それから俺は、
彼女が興味を持つような話題を出して、
その、キラキラ輝くような笑みを見て、



この子を精神的にも助けてあげたい、
海を笑顔にしてあげたい。



ーと、思うようになり、それが、既に、
医師として患者を助ける域を限度を
越えていることには
この5ヶ月で気付いていた。