父が来ないまま式は終わり、不思議に思っていた俺と母。
家に帰り着いたとき、母の携帯が鳴った。
母は携帯を耳に当てしばらく固まっていた。
どうしたのかと見ていると、母が携帯を落とし……取り乱した。
「一哉が……かずやがぁっ!!」
俺の前ではお父さんと呼び、滅多に言わない父の名前を叫び、泣いていた。
さすがに、こどもの俺でも父の身に何かが起こった事くらい察しはついた。
でも、どうすればいいのかは分からない。
母を慰めることも誰かに助けを求めることも出来なかった。
ただ……泣く母の姿を見ていた。
そしてその日は……少し泣いて落ち着いた母が、俺を連れて病院へと行った。



