浮遊していた人たちはそれぞれの国や故郷にゆっくりと
下降し戻っていった。非常にゆっくりと着地し。何事も
なかったかのように青空を見上げ両手を広げて大きな欠伸をした。

不思議なメロディーが聞こえてくる。天使の歌声だ。人々は
やさしい母のまなざしを天空に感じた。それは銀河系ほど
もある大きな瞳がじっと地球を見つめていたからのようだった。

オーロラに輝く不気味な黒雲層は、さらに密度を高めながら
地下へ地下へともぐりこんでいった。すべてのシェルターに、
地下壕に、地下の宮殿に。どんなに完璧に密封していても
黒雲は進入してきた。海にも。

北極海、潜水艦が浮上した。ハッチが開いて一人だけナムストーン
と言いながら這い出てきた。ほかは全員死んでいた。

地下宮殿も独裁者もみな眉間を撃ち抜かれ死んでしまった。エゴや
邪悪が眉間からアメーバ彗星SACに吸い取られたとしか思えない。
一様に皆同じ、そんな死に方だった。

東京霞ヶ関の地下官僚システムは崩壊した。悪意ある
官僚や政治家、極悪人はすべていなくなった。SACは
地球上の全ての邪悪を吸い取るクリーナーだった。

これは40億年に一度あるかないかの宇宙の大異変でも
あったようだ。