このころナセルは実業家として東奔西走していた。
それでも天文学会誌には毎月隅々まで目を通していた。

今月号の片隅に先月号の訂正記事が出ていた。ナセルは
なぜかそれがすごく気になっていた。

「先月号の最終ページの三行報告の中でハワイキラウェア
天文台が発表した『3年後の8月に地球に巨大隕石が衝突
かも?』という記事は、再計算の結果全くの誤りであった
ことが判明しました。訂正し謹んでお詫びいたします」

先月号を確認してみると、最終ページの各地方天文台報告
の中で、確かにあった。

「3年後の8月15日に巨大隕石地球に衝突の可能性80%、
ハワイキラウェア天文台」

ナセルは直接キラウェア天文台に電話を入れてみた。なか
なかつながらない。やっとつながるといきなり怒鳴られた。

「今言ったじゃないですか、リック天文台とローウェル天文台
では確認できたといってますが、キットピーク天文台とパロマ
山天文台ではまだ未確認だそうです。オーストラリアのストロ
ムロ天文台も確認してます。英国のグリニッジ、日本の野辺山
とも今連絡をとってます。現在再計算中ということです!」

と言って一方的にガチャっときられた。これは何かある。再度
かけなおしたが二度とつながらなかった。本来なら「ご迷惑を
おかけしてすみません」で済むところだ。

本能的にナセルは何かを感じてオサムオサナイに詳細に報告した。