バグダッド作戦室のフセインは発射準備完了を確認すると
第一基目の発射を直ちに命令した。作戦室最前列の高官が
赤いボタンをぐっと押した。

ところがミサイルは発射されない。国境のミサイルは空を見上げたままだ。
連絡が入ってあわただしくミサイル周辺機器を点検し始めた。
5分後フセインは二基目の発射を命令した。

歴史的なイスラムのユダヤへの核攻撃の瞬間は克明にビデオに写し
取られている。イスラムの英雄サダムフセインの決定的瞬間、
しかしこれも発射しない。

フセインは司令塔から降りてくると第三基目の赤いボタンの前に立った。
カメラに向かい握りこぶしを作って全国民に訴える。
ついにフセイン自ら第三基目の赤いボタンを押した。

決定的瞬間はそれでも起きなかった。
唖然として空を見つめるサダムフセインイラク大統領。

ヨルダン国境では午後8時30分、あわただしく3基のミサイルの
再チェックがなされていた。原因はいまだ全く不明だ。
バグダッドの緊急指令で発射は中止直ちにシェルターへ帰還せよ、
とのことだったがその混乱ぶりは激しく慌ただしかった。

天空の偵察衛星はそれを見逃さなかった。克明に追跡アプローチ、
ズームアップされて直ちにペンタゴンCIA情報分析局へ。
国防省から大統領へ緊急連絡が入る。

「イラクが軍事行動を開始しました。ヨルダン国境に3基の
スカッドミサイルが慌ただしい動きをしています」

映像と国防省長官からの詳しい説明が入る。中東キプロス、
トルコ、サウジアラビア、クェートの米国軍、ペルシャ湾の
空母エンタープライズ、米国3軍は直ちに臨戦態勢に入る。

大統領の一言の命令で戦闘開始である。1991年の湾岸戦争でも
壊滅できなかったフセイン体制、テロの温床、父の代からの仇敵。
休戦協定に違反して国連の核査察をこの数年ずっと拒み続けてきた
サダムフセインはいったい何をしようとしているのか?