こうして最終戦争の危機は回避された。だがしかしそれは
また新たなる不毛の大掛かりなテロ戦争の幕開けでもあった。

7月には撤退を完了しイスラム武装集団はパキスタンにとどまった。
カシミール独立派の一部は地下に潜みまた過激なイスラム戦士は
国際テロリストとして欧米諸国へと散っていった。

指導者オサマを失ったカシミール独立派は軍部反シャリフ派と連携し
て軍事クーデターを起こしこの年の10月ついにシャリフ首相を解任した。

すぐさまムシャラフ総参謀長を首相にという声が上がったがムシャラフは
固辞した。ナムストーンの微妙な輝きの変化が首相就任を辞退させ続けた
のだ。それでも実権は着実にムシャラフに集中していった。

そしてついに21世紀、2001年6月にムシャラフは大統領に就任した。
すべての公的行事を終えて3ヶ月、大統領府最上階の祈りの部屋で
久方ぶりに至福の時を過ごした。

その日もカシミールを望む山並みは美しく9月の空はすがすがしく冴えわたり
火をつけたばかりの煙草の煙を大きく吐き出したその時だった。
右ポケットの石がにわかに大きくバイブレーションを起こした。