「北海道から転校してきました、坂本和哉です。これからよろしくお願いします!」


 そして最後にニッコリと微笑む。女子からは「キャー!」と歓声がわき、男子の方からは「ケッ」という舌打ちが聞こえた。


 くせっけな髪の毛を、ワックスだかなんだかで固めている(いや、キメている、と言った方がいいのかもしれない)。目は切れ長で、爽やかな印象を与える。

 まあ、要するにイケメンがやって来たということだ。



 昨日までのわたしだったら、きっと何も考えずに「よろしく」と言っていただろう。しかし、転校してきた彼は、『Stripe』で出会った人だったのだ。



 そして、自己紹介。


「朝倉美和です。社会と美術が好きです。これからよろしくお願いします」


 甘いモノについては触れないようにしておいた。今日のわたしの髪型はツインテール。昨日は髪を下ろしていたから雰囲気も多少違うだろう。もし彼が昨日『Stripe』で出会った女子がわたしであるということに気がついたら、またちょと面倒な事になる予感がする。


 できればこのまま平和に中学校生活を終わらせたい。



 そう思いつつ椅子に腰を下ろしたわたしだった。でも、その思いは一瞬のうちに打ち消された。




「あの、君、昨日『Stripe』にいた人ですよね」




 彼の方から話しかけてきた。




「えっ?えーと……その……」




「朝倉?朝倉なんだよな?お前のことを、ずっと探していたんだ!」



「へっ?ずっと、探していた?」




 教室の空気がざわつくのがわかる。担任の大島先生も、



「えっと、坂本くん、朝倉さんにはまたあとで、先に進めたいのですが……」



「……」

 

 坂本は、まだ何かあるような顔で席についた。