「ただいまー。あ、誰も居ないのか」


 飼い猫のななが『にゃー』と鳴いてわたしを出迎えてくれる。



「なーな。お前は今日もかわいいねえ」



 わたしはななに頬ずりをする。



 なながわたしに擦り寄ってくる。




「どうしたの?なな。あ、わかった。ミルクね」




 そう言ってわたしは冷蔵庫を開けた。



「やだ、ミルクきれちゃってる。ちょっと買ってくるね」



 わたしはエコバッグと家の鍵を掴んで走りだした。



「ふー。これでななも喜んでくれる」



 わたしは満足気にエコバッグの中を覗き込む。



「おい、お前転ぶなよ」


 
 そんな声が、上から聞こえた。ついでにアメも、落ちてきた。



「和哉!」



 わたしは実は、和哉に絶対に渡したいものがあるのだ。でも、今はそれを持っていない。




「和哉、もし、良かったらなんだけど…わたしの家に来てくれない?」