もう疲れた……。こんなに辛い思いをするのは。



 涙が溢れそうになるのを、必死におさえる。




「お前……どうしたんだよ!」


 俊一が、驚いた声をだす。それと同時に、リズミカルな足音が聞こえた。



「花粉症よ!」



 わたしはそう叫んだ。もう、声を上げて泣きたかった。



「ならマスクをしとけ」



 後ろから和哉の声がした。そして、マスクがつけられる。



「ふぉふふぁ!ふぉふふぃふぁふぉふぉ!(和哉!どうしたのよ!)」



「お前、今ピンチだったろ」



 和哉はそうわたしにささやくと、俊一に言った。



「お前、今から宮口のところい行ってやれ」



「……なんでだよ」



「宮口の顔、見てみろ」



 和哉はそれだけ言って、わたしの手を引く。



「ちょっとー、あんだけでいいわけ?」



「ま、宮口の顔を見れば、なんとかなるだろ」



 和哉はそう言うと、わたしの前に手を突き出して、「なんかくれ」アピール。



 わたしはチューウィンガムを取り出すと、和哉の方に投げてよこした。


「お前、甘いモン食ってんだな」



「なによー、悪い?」



「俺が今日かっらいガム『Stripe』で買ってやる」



「いらないもーん」





 その翌日。芽衣と俊一は付き合いだした。

 
 あんなにいろいろあったのに……ナゾだ。おまけにわたしと芽衣も仲直りした。


 和哉に


「なんかしたの?」


 と聞くと、


「何にもしてないけど」


 としれっとしている。不思議な奴だ。

 

 毎日わたしの疑問は増えていく。


 わたしがなぜ和哉に恋をしたか、ということも。