「芽ー衣ーー!」



 二階の窓から、芽衣の背中が校庭の中に見える。待っててよ、芽衣。あんたはわたしの一番の友達なんだから。

 
 いつだって穏やかで、優しい芽衣。わたしのそばに、いつもいてくれた芽衣。


 ごめん、ごめん……。



 ただその一心で、わたしは走った。



 上靴を通学シューズに替える間もなく、わたしは正面玄関を飛び出そうとした。なのに……。




「待て」


 口をいきなり塞がれた。


「……誰……?」



「俺だ」



 聞こえてきた、ひどく冷静な声。それは……。




「俊一……」



「お前は今から何をしようとしている?芽衣のところに行くのか……?」



 腕をぐっと掴まれていて、身動きを取ることができない。



「放せっ……!」



 俊一の手から腕が放された。俊一は、一瞬顔をうつむかせて、また顔を上げた。



「好きです。朝倉のことが」