とりあえず俺は、凛のケガの手当てをしてやる事にした。


テレビ台の引き出しの中に救急箱があると凜が言うから、俺はそこから救急箱を出した。


傷を消毒して、絆創膏を貼る。


凛は計六本の指をケガしていた。


「先輩、私……。

先輩が前に教えてくれた合気道の技を頑張ったんです……。

すごく怖かったけど、びっくりするくらい相手が倒れて……」


「凛、あんな状況で俺が教えた技が出来たのか?」


凛はこくんと頷いた。


「先輩に教わってなかったら、私とっくに……」


「凛!」


俺は思わず凛をぎゅっと抱きしめた。


「何回か頑張ったんですけど、最後は捕まってしまって……。

こ、怖かった……」


俺の腕の中で震えている凜。


かわいそうに……。


「先輩……。

私、気持ち悪いからシャワー浴びて来たいんです。

でも先輩、まだ帰らないで…。

お願い……!」

 
「凛、大丈夫。ここにいるから、安心して入っておいで」


俺がそう言うと、凛はホッとした顔をして風呂場へと向かった。


凛がシャワーを浴びている間、俺は自宅に電話を入れた。


親には友達の家に泊まると嘘をついてしまったけど。


それでも今夜は、凛が眠るまでそばにいてやろうと決めていた。