凛はブラウスのボタンが全て無くなっていて、服がすっかりヨレヨレになっていた。


足がガクガクになっている凛をなんとか自転車に乗せると、俺は帰り道を急いだ。


震える手で俺に必死にしがみつく凛の指先から、少し血が流れている。


凛のその痛々しい手に、俺は自分の左手をそっと乗せた。


「ごめんな、凛……。

怖い思いさせて……」


俺がこんなに近くにいたのに……。


「先輩……。来てくれて、ありがと……」


涙声の凛に、俺は胸が張り裂けそうになった。


アパートに着くと、俺はフラフラになった凛を支えて階段を上がった。


凛から鍵を預かり、丸いドアノブに鍵を差して回して扉を開けた。


入ると凛が、カチッと玄関の電気をつけた。


部屋の中を見渡すと、玄関のすぐそばに流し台があり、すりガラスの引き戸の向こうに部屋があるようだった。


俺は凛を支えながらその部屋に入り、電気をつけると、とりあえず凛をそこへ座らせた。


六畳くらいの小さな部屋に、テレビとテーブルと座布団が二つ。


この部屋の奥に部屋が二つあるようで、どうやら片方が母親の部屋、もう片方が凛の部屋だと思われた。


とても古いけれど、掃除が行き届いていて、清潔感があるなと感じた。