ゾクッと背中に悪寒が走る。


まずい……。


ものすごく嫌な予感がする。


心臓が有り得ないほど、ドクンドクンと大きな音を立てる。


その時、近くで何やら不自然な物音が聞こえた。


その音はビルの隙間から聞こえてくる。


「いや……っ!」


今の声……。


凛の声だ!


俺は狭いビルの隙間を、身体を横にして大急ぎで走った。


走って向かった先に見えたのは……。


壁を背にして男に押さえつけられている凛の姿だった。


「凛!」


「…せ、んぱいっ」


恐怖で怯える凛の姿を見た俺は、ワナワナと強い怒りが込み上げて来た。


「てめぇ、ぶっ殺す!!!」


俺はその男を凛からひっぺがすと、いとも簡単に強く地面へと叩き落とした。


あまりの早業にきょとんとする男。


すぐに腕を掴まれたが、相手が悪い。


絶対立ち上がれないポイントに技が決まっているので、コイツは絶対に起き上がれない。


「お前、俺の彼女に何てことしてくれてんの?

警察呼ぶからそのまま待ってろ。

凛、お前は今すぐ外へ出ろ」


「は、はい」


凛が道路へ出たのを確認して、俺はとりあえずそいつの脇腹を思いっきり蹴っておいた。


苦しがる男を尻目に、俺は警察に電話をかけた。


そいつは数十分後、あっけなくパトカーで連れて行かれた。