キミさえいれば

そう。


私と先輩は、付き合って半年以上経った今でも、まだキスをした事がなかった。


「白石と黒崎先輩ってすごく仲が良いのに、意外と言えば意外だな」


そう言って田辺君が、オレンジ色の髪をかき上げる。


少し前に岸先輩が、黒崎先輩と綾香さんはキス止まりだと、聞いてもないのに教えてくれた。


岸先輩は私を安心させるために言ったんだろうけど、その言葉はかえって私を不安にさせた。


先輩といると幸せ。


一緒にいられるならそれだけでいいと思っていたのに、その話を聞いて以来、そのことがすごく気になっていた。


黒崎先輩は綾香さんとはキス出来ても、私とは出来ないんだろうか?


どうして? 先輩……。


私、悲しいよ……。


私は先輩とならって思うのに。


先輩は、私の事がそれほど好きじゃないのかな……?


綾香さんは美人だし、大人っぽい色気だってある。


私は子供っぽいから、キスする気になれないのかな。


「凛、気にしなくていいわよ。

大切にされてる証拠だと思うわよ」


「そうかなあ……」


大切だから、好きだからするんじゃないの?


「黒崎先輩の凛を見る目って、すごく優しいもの。

大丈夫。

焦ってするものじゃないし。

いつか自然にそうなる日が来るわよ」


そう言って美咲が励ましてくれたけど、私はますます不安が募っていくのだった。