キミさえいれば

文化祭当日まで残すところあと一週間となり、私達生徒会の仕事も大詰めになっていた。


このところバイトに全然入れていないから、早く再開したいところだけど。


「ねぇ、凛。

うちの学校の文化祭に、ある伝統があるの知ってる?」


お昼を食べた後、私の教室に遊びに来ていた美咲がふいにそんなことを言い出した。


「伝統? ううん、知らない」


「文化祭が終わるとね、文化祭で使った紙類をグランドで燃やすらしいの。

その火の周りをね、男女のカップルが囲んで踊るのが伝統らしいのよ」


「お、踊る? 踊るって何を?」


「数年前まではフォークダンスだったらしいけど、さすがに時代錯誤だってみんなが言い出して、最近じゃ生徒好みの音楽が流れるらしいわ」


「ふぅん……。変わった行事だね」


「変わってるけど、でもね。

これって好きな人に急激に近づけるチャンスじゃない?

だから好きな人に、一緒に踊ってくださいって申し込む人が大勢いるらしいの。

これがきっかけで付き合うカップルも多いみたいよ」


「へぇ、そういうものなんだね」


文化祭の後だし、気分が盛り上がるからかな。


「黒崎先輩も、それがきっかけで西野先輩と付き合い出したらしいよ」


「え……?」


そうなんだ。


先輩は去年の文化祭の日に綾香さんに告白されて、それで付き合い始めたんだ……。