キミさえいれば

コロッケを食べてすっかり満足した私達は、その場所から自転車に二人乗りをすることにした。


自転車が走り出すと、私は先輩の背中に頭をもたれて、彼のお腹にそっと腕を回した。


先輩の背中って、すごくホッと出来るから不思議。


それってやっぱり、たもっちゃんに似ているからなのかな?


私は今日の出来事を思い出していた。


先輩とやり直したいと言った綾香さん。


先輩にキスをした綾香さん。

 
先輩はどうするのかな?


綾香さんに別れを告げられた時、すごくショックだったって言っていたから、きっと大好きだったはずだよね?


そんな人からヨリを戻そうって言われたら、嬉しいに違いない。


二人がまた付き合うことになったら、もうこうして二人乗りなんて絶対に出来ないよね。


たもっちゃんの代わりも当然してもらえないよね。


そうしたら、どうしよう。


すごく寂しい。

 
いや……。


そんなのいや。


先輩、綾香さんの元へ行かないで。


そんなこと思うのってすごく勝手だけど、でも今の私には先輩がすごく心の支えで……。


いなくなっちゃったら私……。


そう思ったら、先輩に掴まる腕に力が入っていた。


先輩の背中は、なんだかなつかしい匂いがする。


お日様みたいな優しい匂いに、無性に泣きたくなった。